0人が本棚に入れています
本棚に追加
まず当日、鳥居と成田と待ち合わせて会場に行き、受付を済ませた俺たちは顔を見合わせた。手渡された席次表の、新郎新婦の席に一番近い、新郎の主賓席に俺の名前がある。
その一つ奥のテーブルに鳥居と成田の名前がある。他にも見慣れた名前があり、大学時代の友人が集められている感がある。何度か飲みの席で一緒になった奴もいて、俺がそちらに入っていないのは明らかにおかしいのだ。
しかし席札は席次表の通りに置かれており、式場の仕事は完璧なようであるし、そうなれば俺は常識人として席札のある席に座るしかない。
サービススタッフに飲み物を訊ねられ、炭酸水を頼み、話す相手も居ないのでメニュー表を確認する。なんでもない顔で、テーブルの面子の会話に聞き耳を立ててみる。
「あいつ、女とやれたんだな」
「お前にフェラまでしてなあ」
「掘り返すなよ悪趣味だな。興味本意ってやつだよ、黒歴史」
「俺は断ったから。お前の方が悪趣味だわ」
「どっちにしろ若気の至りで許されるだろ、猿だったんだから」
「猿だな、猿だった」
右隣に配席された二人は、知り合い同士のようだ。しかも会話の内容からして、太陽がゲイまたはバイであることを知っているようだ。知っているどころか肉体関係に近いところまで行ったらしい。
囁き声だが、俺には十分聞こえている。可能性に思い至っていないのか、それとも聞こえても構わないと思っているのだろうか判然としない。
その猿のうちの一人が祝辞など述べ始めたので、俺はずっこけたくなった。なんでよりによって猿に頼むのか、太陽の考えることは分からない。
最初のコメントを投稿しよう!