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「どうした? 食欲ないのか?」
「ううん。大丈夫」
「あのさ、凛伽……」
「何?」
「あ、いや。何でもない。帰る時に話す」
「何よ? 言いかけて気になるじゃない」
「ちゃんとしたいから」
「ちゃんと?」
「うん。ああ、それより、朝のこと怒ってるよな? 俺がイラついてたから」
「別にそんなこと……」
「悪かった。最近、仕事忙しくて疲れてて、つい。凛伽ならわかってくれると思って」
旺志郎はそれだけ言うと、髪をくしゃっとかきあげ、そのままスラックスのポケットに手を入れた。
焦点の合わない視線を私に向け、小さな笑みを一瞬だけ見せたあと、何も言わずに器に残っているうどんをひたすら掬って口にした。
私たちは言葉を交わさなくても、お互いのことを理解できると信じている。だけど、最近の私は少し自信、ない。
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