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お姉様達の中には、日がな磔刑されたまま放置されたり、両手を縛られた状態で正座した膝に大岩を置かれたり、中には裸にされて針山に押し付けられたり……言葉にするのもおぞましい。どうしてそんな残虐行為を思い付くのか、疑いたくなる程にありとあらゆる責め苦に遭っていた。
叫ぶことすら、出来なかった。
今更ながら思い知る。あれはきっと、世界中からSalemの森に逃げ延びてきたお姉様方それぞれの、過去だ。
魔女の1人1人、影法師のように切り放すことのできない闇を背負い、その中を悪魔よりももっと獰猛な人々の山が蠢いていた。
――あれが〈外〉の世界だとしたら、何て恐ろしいの……。
それを、ティトゥバ様――アガサ様のお母様が守って下さったのだ。この〈中〉を守る為に命を落とし、それを娘のアガサ様に託して……。
「ははは! お主も、この森の一翼を担ってくれそうだね。無事に新年を迎えられそうだ」
おぞましい過去の断片に絡め取られるお姉様方をそれ以上見るのに耐えられず、石畳に突っ伏している私の頭に哄い声がかかった。もう、アガサ様の御声に戻っていた。
――真逆、セーラの娘があんな力を
――でも、あの魔法は凄いわ
――病で伏しているスカーレットの後継になるやも、いや、もしかしたらそれ以上の……
――いずれにせよ、ドロシーの魔法があれば〈外〉からの守りは堅くなる……!
波が押し寄せるように、ひそひそ話が周囲で起こる。すると、ふん、と鼻を鳴らしたレベッカお姉様が踵を返して屋敷へと戻っていき、それを合図に集会はお開きとなった。
「どうしたの、そんな思い詰めた顔をして」
思わず黙りこんでしまっていた。顔を上げると、姪の魔法習得がそれほど嬉しいのか、スカーレット叔母様の顔色は明るい。
「……スカーレット叔母様、教えて欲しいことがあるの」
「まぁ、ドロシーが珍しいわね。何かしら」
「……どうして、どうして、セーラは……セーラお母さんは〈外〉へ出てしまったの……?」
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