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「ねぇ、トト。そのイミンと言う方達は……、どんな辛い思いをしているのかしら」
「ん? あー、そりゃ良い生活ってのとは程遠いだろうな。一部にゃ金持ちもいるよ。ちょっと前に西部で金脈掘り当てた奴等だな。まぁ、それ以外は大体そいつらの奴隷みたいなもんだろうけど」
何てこと……。かつてお姉様達がSalemに逃げられる前のように、イミンの方々も酷い仕打ちを受けているのかもしれない。想像しただけで心が痺れそうになる。
「……分かったわ、三日毎よね」
「本当か?!」
頷くと、咄嗟にトトが私の両手を掴んだ。
「ありがとな、凄く助かるよ!!
巨人の如く大きな掌に包まれて身動きできない。同時に、少しだけ恐怖も入り混じった胸のときめきを抑えられなかった。
ちらりと視界の隅に裏庭が覗く。まるで身ぐるみ剥がされたように色のない木々が痛々しい。
「……私が出来ることは本当にちっぽけだけれど、……もし、この子達がイミンの方々の屋根になり護ることが出来るのなら……私、頑張るわ」
すると、何故かトトが手を離した。
神妙な顔つきで黙ったと思うと、
「なぁ、その移民達を思うのがお前の良いところだけどよ……俺のことも、ちっとは考えてくれよな」
「……えっ、と……?」
「全くニブいなぁ。俺としちゃ、ドロシーに毎晩来て欲しいってこと!」
――どうして私、ドキドキするの。
あの晩を思い出すと、胸の奥が火照るように熱が籠る。
約束通り、何とかお姉様方の視線を忍んで森の境界を越えて〈外〉へ、トトの小屋へと通い続けて半月。初めこそ、山毛欅の木も樫の木もピクリともせず私を拒み続けていた。
それもその筈、アスファルトと呼ばれる灰色の道に囲まれた村の一帯で育つ子達は〈外〉の人間達に声を閉ざし続けていた。
……大丈夫、大丈夫よ。
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