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− −数ヶ月後。
「離婚はしない! 大体お前には金も職もないだろ!」
面白いほどに生気がなくなっいく夫の顔を見て、こんなにもはっきりと血の気が引くって状態が見えるものなのだなと、眺めていた。
『あんな寄生虫とは、もうすぐ別れるから』
ボイスレコーダーに録音された夫の声を大音量で再生した。
「そうね。私は寄生虫ですもんね」
「そうだ。そんなんでは生活もできないだろ!」
「ふふ。それがね全てを計算したら当面は大丈夫そうよ。それにもう在宅でイラストレーターの仕事を再開しているの。今までもたまに単発で受けていたから、本格的なそう難しくなかったわ」
夫は、間の抜けた金魚のように口を動かすだけで、言葉が出てこない。
「もう、いい加減にしろ!」
呼び出していた義父が声を上げる。
「コウキの親権は渡しません。あと、あなたには慰謝料を請求します。もちろんあの女にも。それから財産分与ですが、この家に車、貯金など全の合計を現金で頂きます」
財産分与の話を聞き、かすかに安堵の色を浮かべた。
「浮気をしたあなたに離婚を決める権利は一切ありません。これ以降は、弁護士さんを通してください。よろしくお願いします」
「そんなの関係ない、勝手に進めるなと言ってるだろ!」
勢いよく立ち上がる夫を静止し、弁護士さんが説明を始めた。
離婚に強い方にお願いしたので、この程度の騒ぎでは動じないところが頼もしい。
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