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「こんにちは」
三日月ブランコにすわるボクの目のまえに立っていたのは、しらない女の子だった。
「ねえ、さっきからなんで泣いてるの?」
泣いてたのをみられたのが、はずかしくなって目をこすった。
「べつに、泣いてなんかないもん」
「うそだー、おめめが、まっかだよ」
ふふっと笑った女の子が、ボクのとなりのブランコにこしかけて、ゆっくりとこぎだす。
「あたしも、むかし、ここでよく泣いてたんだ」
「そうなの!?」
おどろいて、女の子の顔をみてから『しまった』と思った。
これじゃあやっぱりボクが泣いてたって、バレちゃってる。
女の子はニッコリ笑ってから。
「あててあげようか? 君はまだどこに行くのかを決められなくて泣いてたんでしょ?」
「なんで、あっ……」
そのとおりだから、はずかしくなって口をとがらせた。
「そんなとこまで、あたしに、にてるなんて、やっぱりそうだ。君がいい、君なんだとおもう!」
女の子はピョンとブランコをとびおりて、ボクの前に立ち手をのばしてきた。
ボクより少しだけおねえさんのようだった。
「よおし! 君にはとくべつに、あたしの『とっておきの場所』をおしえてあげる」
「え?」
ボクの手をひき、おめめを細くしてうれしそうに笑った女の子。
「さあ、行くよー! しゅっぱーつ、しんこう!」
一緒に行くなんていってないのに、どんどんひっぱるから、ボクはつれていかれないように、足をふんばった。
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