29人が本棚に入れています
本棚に追加
「やだよ、ボクはまだここにいたいんだ」
「でも、君はもうすぐの子でしょ? 行き先がないと、勝手に決められちゃうんだよ? それでいいの?」
「それは、イヤだよ。だけどこわいんだもの。楽しくないんだもの」
「あたしが知ってる『とっておきの場所』は、こわくないよ? とっても楽しいの」
急に立ち止まると、女の子はボクをふりかえる。
「ねえ、一度でいいから、いっしょにきてくれない? それで、君が気に入らなければ、あきらめるし」
泣いてるのかな、って思った。
笑ってるんだけど、さびしそうな顔をしたから。
「ちょっと見に行くだけだよ? 決めちゃうわけじゃないけど、それでもいい?」
「いいよ、それでいい!!」
やっと女の子に笑顔がもどったのをみて、なんだかボクもホッとする。
虹色の階段をのぼったら、雲の飛行機がそこにあった。
女の子がすぐにのり込むから、ボクもあわてて後ろにすわる。
行き先さがしの雲の飛行機。
一度だけ勇気をだして、ボクものったことがある。
でも、その時に行ってみた場所は、とてもさびしそうだったり、おこってばかりのところだったり、ちっとも楽しく思えなかった。
どこに行ったって、おなじなのかもと、悲しい気持ちになったんだ。
あれからずっと『もうすぐ』が来るのがこわくて、泣いてばかりだった。
「あの、お家なのよ。とっておきなの」
フワフワうかんだ飛行機が、女の子の指さす方にながれていく。
赤いお屋根の小さなお家だ。
あのお家、しってるよ。
ボクが一度のぞいたお家だ!
最初のコメントを投稿しよう!