ゆびきりげんまん

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「やだよ、ボクはまだここにいたいんだ」 「でも、君はでしょ? ()き先がないと、勝手(かって)に決められちゃうんだよ? それでいいの?」 「それは、イヤだよ。だけどこわいんだもの。楽しくないんだもの」 「あたしが知ってる『とっておきの場所』は、こわくないよ? とっても楽しいの」  (きゅう)に立ち止まると、女の子はボクをふりかえる。 「ねえ、一度(いちど)でいいから、いっしょにきてくれない? それで、君が気に入らなければ、あきらめるし」  泣いてるのかな、って思った。  笑ってるんだけど、さびしそうな顔をしたから。 「ちょっと見に行くだけだよ? ()めちゃうわけじゃないけど、それでもいい?」 「いいよ、それでいい!!」  やっと女の子に笑顔がもどったのをみて、なんだかボクもホッとする。  虹色(にじいろ)階段(かいだん)をのぼったら、雲の飛行機(ひこうき)がそこにあった。  女の子がすぐにのり込むから、ボクもあわてて後ろにすわる。  行き先さがしの雲の飛行機。  一度だけ勇気(ゆうき)をだして、ボクものったことがある。  でも、その時に行ってみた場所は、とてもさびしそうだったり、おこってばかりのところだったり、ちっとも楽しく思えなかった。  どこに行ったって、おなじなのかもと、(かな)しい気持ちになったんだ。  あれからずっと『もうすぐ』が来るのがこわくて、泣いてばかりだった。 「あの、お(うち)なのよ。とっておきなの」  フワフワうかんだ飛行機が、女の子の(ゆび)さす方にながれていく。  赤いお屋根(やね)の小さなお家だ。  あのお家、しってるよ。  ボクが一度のぞいたお家だ!
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