ゆびきりげんまん

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 リビングに、ピンクのうさぎのぬいぐるみと、赤ちゃんの写真(しゃしん)がある。  ママは、時々それを抱きしめてさびしそうな顔をしていた。  その前で立ち止まると、写真を手にしてのぞきこむ。  やっぱりそうだ! 「アオくん、その写真はね、ママの大事なものだから」 「モモちゃんでしょ、モモちゃんだよね?」 「え?」  おいかけてきたママがおどろいた顔をして、ボクを抱きしめる。 「アオくんは、モモちゃんを知ってるの?」 「知ってるよ。お空で()ったの。モモちゃんがこの家がいいよって、ボクを連れてきてくれたんだもん」  モモちゃんのこと、ずっと忘れててごめんなさい。 「ボクね、モモちゃんと約束したの。ママとパパを笑わせるって。モモちゃんにお願いされたんだ。ボク、約束まもれてたかな? だいじょうぶかな?」  だって、ママが泣いている。  ボクを抱きしめて、たくさん泣いている。  ママをギュッと抱きしめかえしたら、いいこ、いいことボクの頭をなでてくれる。  まるで、モモちゃんみたいだ。  モモちゃんが(おし)えてくれたとおり、ママはいいにおいでやさしくて、パパは強くて楽しくて、毎日が楽しい。  モモちゃんとの約束、ずっと忘れててごめんね。  ママを泣かせてごめんね、モモちゃん。
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