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「さてと、帰ろっか」
そろそろ帰らないと、暗くなってしまう。それに、二人が迷子になったと連絡してから何の音沙汰もないと、痺れを切らしたお母さんに怒られてしまいかねない。
「こんな時間だし、ナギちゃんも夕ご飯食べてく? 帰りは送るよ」
「でも……」
「そうだ、帰りにケーキでも買って帰る?」
私はナギちゃんに言ったはずなのだが、何故かユズキが即座に「ケーキっ?」と嬉しそうに反応した。
二人の問題に巻き込んでしまったお詫びって訳ではないけど、まあ、たまにはいいだろう。それに、私も一日中歩き通しで疲れたので、甘ったるいものが食べたくて仕方がない。
「……いいんですか?」
ほのかに、ナギちゃんは目を輝かせた。やっぱり、女の子に対してケーキというのは効果覿面のアイテムらしい。
「いいよ。行こう」
「はいっ」
夕食がを一人分多く用意してもらうのが事後報告になっちゃうけど、まあ、お母さんは許してくれるだろう。たぶん。
私を中心に、三人で手を繋いで歩く。きっと、傍から見れば仲睦まじく、とても幸福な光景に見えるんだろうな。なんて、私は微笑む。
「こんなことで、あたしは懐柔されないんだからね」ユズキがボソリと呟いてから、こちらを見上げた「今回だけは、まあ、仕方がないから許してあげる。あたしは器が大きいからね」
我が妹ながらしつこい子だなあ、と私は苦笑する。
「はいはい」
「でも、次同じようなことをしたら、今度こそ絶対に許してあげないから」
言って唇を尖らせるユズキに、私とナギちゃんがクスクスと笑いあう。
きっと、またすぐに同じようなことをするんだろうな。そう思ったけど、口には出さなかった。
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