宙に漂う罰の素

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「どうか許してください。」 そう言って下げた男の頭を、私は見下ろした。 はっきりいって、もううんざりなのだ。さっきから、許してくれ、許してくれって。鬱陶しいことこの上ない。 声も聞きたくないし、顔も見たくない男だ。 (この頭、踏みつけたら黙るかしら) ふと思う。 右足のつま先を持ち上げたくなった。が、踏みとどまった。暴力沙汰にされないとも限らない。 こずるいことに関して、天才的な頭の回転のよさを見せる男だ。 ほんと、なんでこんな男の相手を、ほんのわずかでもしてしまったのだろう。
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