千勢 逢介さん「伝えたかったこと、伝えられなかったもの」

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千勢 逢介さん「伝えたかったこと、伝えられなかったもの」

 「あそこはダメだ。私が一人なのに、一人じゃないクラスメイト達がいるから。」  なんと端的な言葉なのだろう。端正な文章でつづられるのは、思春期の少女の繊細過ぎる心の動き。  過剰なまでに自分を厳しく罰し、そして必要以上に深く傷ついてしまう不安定な心。自分の心を偽れない生真面目さとそれゆえの痛々しさ。  作者の千勢 逢介さんは、このような思春期の少女の心をどうしてこうもうまく言葉にすることができるのか、と溜息がでます。  主人公「サキ」はSNSでいつも隣町の高校生「ミナミ」とやりとりをしています。転校と祖母の介護に忙しい母、ひとりぼっちのサキを癒すミナミの存在。けれどもそれは「特別な絆」であると同時に「同族嫌悪」でもあり「憧れ」でもあり─そのことがサキを苦しめます。  この作品は、私などが語るよりも、ぜひ実際に読んでほしいのです。  結末をどうとらえるのかも人によってさまざまであろうと思います。  しかし私は、最後のサキの決断が、前に向けてのものであると信じたい。  「伝えたかったこと、伝えられなかったもの」というタイトルと合わせ、何度でも読んでいただきたい作品です。 千勢 逢介さま「伝えたかったこと、伝えられなかったもの」 https://estar.jp/novels/26033049  
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