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狗夜 凛さん「文豪が死んだ」
レビューを書かせていただくことに、ためらいもありました。
それほどに、この作品はすごいのです。
書かずとも底に感じさせる教養、文学への深い愛、そして、一人の女性の狂おしいほどの恋の情念。このような形で書ききることのできる作家が今、巷にどれほどいるのだろう、と思わされます。
大学生の里美は、作家の城倉巧の作品を読み、強烈な読書体験をします。それは、初めから恋にも似た、いやそれ以上に狂おしく自分の「闇」を照らしだされるような体験でした。読書家・文学愛好家であるならば、一度は味わったことがあるであろう読書体験。けれど、それを表現すること自体が相当の苦難の技です。私にとっては、里美が「世界の放つ色が変わっていた」と語るところに、かろうじて私自身の記憶を重ね合わせることができるのみです。
さて、物語は読者が思いもかけない方向に急転換し、そして激しいドラマが繰り広げられていきます。この場合ドラマというのは、出来事それ自体の展開、いわば物語の力もありますが、それ以上に主人公・里美の心の変遷と深まる想いの強さがドラマチックだということなのです。
そして最後に、里美にはある使命が与えられます。それはいったいいかなることなのか。その意味は何なのか。読者は、この作品の読書体験をもとに、ずっと引きずって考えさせられることでしょう。
狗夜 凛さん「文豪が死んだ」
https://estar.jp/novels/26001456
なお、狗夜さんは、「変質」で、妄コン入賞を果たされています。
こちらも面白い作品ですよ。
https://estar.jp/novels/25970511
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