思うがまま

CASE２：公務員の場合

彼は報告書を書いていた。
彼はデスク仕事が中心の刑事。
交番に勤めていればデスク仕事が多くなるのは当たり前だが。

彼は今、先程発生した交通事故の報告書を書いていた。
住所、氏名、車種等を書いて事故発生時の状況の欄に手を出そうとして彼はあることに気がついた。
インクがなくなっているのか丸印が薄くなっている。
もう一度丸印をなぞって濃くしようとすると紙が強く押しつけられるばかりで少しもインクがつかない。
ボールペンのインク入れを取り出してみるとインクは見えてはいたが再度紙に当ててもインクはつかなかった。
恐らくペン先に何かが詰まって出なくなったのだろう。
彼は新しいボールペンを探そうとデスクの中をガサゴソと探したが、運悪くどこにもなかった。
ちょうどその時はその場に誰もいなかったので買いにも行けない。
頭を悩ませながら彼はもう一人のデスクの前に立った。
すると上から『何か』が彼の頭の上に落ちてきた。

『何か』はボールペンだった。

その日、彼は報告書を書き上げることは出来なかった。