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そういう積み重ねがあそこにずっといたくない、って心を決めさせる動機になったんだよな。ってことを改めて思い出させた。
だけど大人になったそいつは、興味津々のわくわくなんてかけらも感じさせない声で。ただ生理的嫌悪感を滲ませた口振りで心底おぞましそうに、彼女の名前をぽろっとこぼしたのだ。
『いや、綺麗過ぎるのもかえって災難なんだなぁと。小耳に挟んだとき身に沁みたわ。俺も彼女もまあまあだから、あの手の男に狙われるような超絶美人の子がうちに生まれはしないだろ、とは。そりゃ思うけどさぁ…。あんな男の彼女に選ばれなきゃ、みんなの玩具にされることもなかっただろうになあって。木村、いただろ。木村だりあ。俺と同じ高校行って、そこで阪口建設んとこの坊の彼女になったんだけどさ。…最初はまあ、ちやほや大事にされてて。よかったみたいなんだけど』
「何の話してんだよ」
からからに渇いた変な声が出た。…みんなの玩具、って。…なに?
さっきは深刻に聞こえたそいつの声が、その先に続いた話の内容の重さの割にむしろどこか軽く感じた。
『いや俺も人伝てだから。実際その現場を見たわけじゃないよ。けど、スマホで撮った写真を見せられたやつがいるから。あったことは本当なのかなって…。ここ一年くらいの話だけど。阪口のやつ、彼女についに飽きてきたのか知らんけど。ときどき親しい仲間連中を集めてみんなで彼女を『やらせて』やるんだって。…あの木村だりあとさせてもらえる、ってんで。密かに噂になってて、最近はあの手この手で阪口に取り入ろうと媚び売る奴らが。あとを絶たないらしいよ?』
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