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 辛そうに浅い息をするジュリアスを支えてベッドまで運ぶと、なんとか横にならせて胸元をゆるめてやって、フィンレーはジュリアスの様子を見守った。  深さがある器に水を汲み、そこに浸して濡らした布を固く絞りながら、アマリアが言っていた、真の姿をさらけ出す薬が、一体どういうものか見当がつかずに気が焦る。  目の前にはただ苦しそうに額に汗を浮かべるジュリアスが横たわっている。 「ジュリアス、ごめんね」  ジュリアスの額に滲む汗を拭いながら、油断すると涙が溢れそうになるのを必死に堪えて、フィンレーはただただ自分の行いを恥じて後悔していた。 「うぅ……」 「ジュリアス?」  不安になってフィンレーはジュリアスの名を呼ぶが、しばらくするとジュリアスの呼吸が整い、汗が引いて、みるみるうちに顔色も良くなってきた。 「ん……?」 「ジュリアス?大丈夫なの」  意識がはっきりしたらしいジュリアスだったが、どこか様子がおかしい。 「え?」  独り言なのかギョッとした顔をして呟くと、ジュリアスは何度か瞬きを繰り返して、そのままなぜかベッドの中に潜り込んでしまう。 「へっ?うわ、なんだよこれ。マジか、おぉう。いやいやいや、おかしいでしょ」  ベッドの中でモゾモゾと動くジュリアスの異様な行動に、フィンレーは訝しみながらも、ふと思い当たって嫌な予感がする。  アマリアの薬をジュリアスは飲んでしまった。人が獰猛な獣に成り果てることもある。その言葉を思い出すが、先ほどまで見えていたジュリアスはいつも通りだった。  けれどなにかが起こっているのは間違いない。フィンレーが考え込む間にも、ジュリアスは奇妙な声をあげてベッドの中で騒ぎ立てている。 「いや待って。やっぱりおかしいでしょ、こんなの」  次の瞬間、勢いよくベッドから身を起こしたジュリアスの姿を見て、フィンレーは想像を遥かに超えるその姿に絶句した。まずはどこかあどけなく変化したその顔だ。  次にジュリアスがフィンレーに助けを求める視線。驚いた顔のもっと下に視線を移すと、あるはずのない豊かな膨らみが二つ。ジュリアスの体が女性になっている。 「え、ちょっと……え?」 「でしょ?変なんだよ。おかしいんだよ。これどうなってるんだよ」  シャツ越しに自分の乳房を鷲掴みにして困惑するジュリアスが視界に入るが、フィンレーの心の中はジュリアスの動揺よりも荒れていた。  〈真の姿をさらけ出す薬〉ジュリアスが飲んだのは、紛れもなくその薬だ。  フィンレーはジュリアスが忙しなく騒ぐ中、困惑を通り越して思考が爆ぜた頭を抱える。まさかジュリアスは女性になりたい願望を抱えていたというのか。 「フィンレー……お前というヤツは。その顔はまさか、なにか知ってるんだな」 「いや。でも、だって」  たわわに実った乳房を揉みしだいて揺らすジュリアスを目の前に、フィンレーは思うように言葉が出てこない。  フィンレーの様子に焦れて、ジュリアスは眉根を寄せながら更に乳房を揺らす。 「よく聞こえないよフィンレー。お前はなにを知ってるの」 「ジュリアスは女の子になりたかったの?心が乙女なの?」 「はあぁ?」
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