箱庭のカラス

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 それでも月が眩しく輝くまでに完成させられる動物の数は限られていた。 「ああ、始まってしまった」  何とか作り終えた雪像が月明かりを浴びて伸びをするように滑らかに動き出した。ウサギやリスは岩の周りで飛び跳ね、イタチは頭についた雪を振り落として遊んでいる。大きな水鳥は池に飛び込み、カラスにエサをねだった。 「ちょっと待ってろ」  カラスはビー玉サイズの雪玉をエサ代わりに水鳥に投げる。他の動物はエサをねだりはしないのにと微笑むカラスの前で、水鳥は美味しそうに雪玉を飲み込んでいる。 「あんまり急いで飲み込むと息が詰まるぞ」  雪で出来た水鳥に何を言っているのだと苦笑する。彼らがあまりにも生き生きと動き回るものだから、時々本物と勘違いしそうになった。 「ゆっくり食べろ」  それでも唯一自分と同じように食事をする水鳥に特に親近感を感じていた。 「今日は天気がいいな」  空はどこまでも澄んでいて煌々と光る満月が庭をかけまわる動物達と自分を照らしていた。足元に出来た濃い青い影が自分を覗き込み、問いかけてくる様に見えた。 ――なぜ、自分にはこんな不思議な力が備わっているのだろうーー
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