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どんなアニメにも例えられそうな能力は見当たらないが、とりあえず暗い部屋に指パッチンをしたら電気が付くようになった。
外で幼稚園の皆と鬼ごっこしても、俺の雷光の如くの速さにより誰も追いつけない。
砂遊びをすれば大量の砂鉄が身体中にくっつきまくる。
そしてこんな意味不明な力を得た代償に……俺は友達を無くしちまった。
そりゃそうだ。
こんな力を披露したら誰だって気味悪がられる。
幼稚園でテレビに指パッチンして付けたら、テレビじゃないのに皆俺から離れていくし。
鬼でもないのに皆俺から逃げていくし。
目に砂でも入ったのか、砂鉄塗れな俺に先生は涙を流すしで……もう正直ストレスの限界を迎えていた。
まだ五歳児だってのに胃がキリキリして耐えられない。
もういっそこの街全体滅ぼそうかな……
なんてことにはならなかった。
自身を受け入れない世間への怒りと、あまりの強大な力のせいで俺は何度か力を悪用しそうになった。
しかしそこに関しては、両親に注がれた過度な愛情のお陰により、俺はダークサイドに堕ちることはなかった。
俺の悩みを理解してくれる父と母に感謝だな。
そんなこんなで今日も幼稚園の園児を勤めに、俺は母に自転車で送迎してもらっている。
はっきり言って送迎は必要ないんだよな。
自分の足で数秒で目的地に着くんだし。
そんなことを母に言ってみたら「また力を使ったら皆怖がるでしょ?」と注意された。
「お父さんも言ってたけど、マコちゃんに友達が出来ないのは自分のように辛いなって泣いてたのよ」
自転車を漕ぎながら母は父の件も補足する。
あれ…そんな事聞いたら目から水が溢れそうになってきたぞ。
ガキは涙腺が緩いから困るんだよなぁ。
本当にこればかりはコンプレックスだぜ。
俺は母に見せないよう、静かに上を見上げながら目の渇きを待とうとしていると…、
「きゃあ!誰か止めて!引ったくりよぉ!」
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