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ふと女性の声と共に、反対側の対向車線から、片手に女性用のピンク色のバッグを掴んだ原付バイクの野郎がこっちに向かってきていた。
引ったくりってのはアイツで間違いなさそうだな。
ちょっくらストレス発散も兼ねて懲らしめてやるか…。
「ダメよ、マコちゃん!」
俺が自転車の後部から降りようとしていたのを母が後ろ向きで、俺の手を掴んで止めてきた。
「気持ちは分かるけど、能力を使うのはやめてちょうだい」
「……」
やっぱり母も、俺が周りに嫌われるような行為は避けてほしいと思っているんだな。
自分の息子が、これ以上誰にも愛されず孤立する姿を見たくはないんだろう…。
だけど…
「俺は親父とお袋のお陰で今の自分がいる。俺も二人のように誰かの助けになりたい。息子が親の真似をするのはいけないことなのか?」
俺の言葉に母は動揺して手を離した。
その隙に俺は、母の返答も待たず通り過ぎてしまった原付野郎を追うことにした。
常人じゃ追いつけないだろうが、俺は音速を容易く超えてしまう体質なので、あっという間に原付の後部に乗っかってしまった。
「おいそこのファッションセンスのねえおっさん。似合わねえ女物のカバンこっちに渡しな」
「うわぁ!どこから乗ってきやがったこのクソガキ!」
あまりの驚きにジグザグと小刻みに揺るがしながら前を走る原付野郎。
立ったままであっても、この程度じゃ俺は落ちないぜ。
「俺にだけ気を配ってちゃダメだぜ。自分のバイクよく見ろよ?」
俺の言葉におっさんは自身のバイクの状況を見る。
「なっ……なんじゃこりゃあ!!!」
空き缶やら折れた傘、謎の金具やらの色々なゴミの金属が原付バイクにもれなく大量にくっついていた。
そしてバランスを崩し、バイクは転倒してしまう。
もちろん俺はジャンプして事故を回避する。
原付野郎はバイクとセットでぶっ倒れたが……
「ち、畜生!覚えてろよ!」
古臭え台詞を吐き捨てて、事故ったバイクを置いて原付野郎はまたも逃走を図りやがった。
学習能力がなくて困る。
俺に逃げられる訳がないだろう。
とは言え、これ以上追って目立つのもいけないと思い、俺はある物を手にして原付野郎に目掛けてぶん投げてやった。
原付野郎は慌てていたせいで、自分のスマホをうっかり落としていたのを知らなかったようだ。
なので返すように俺は投げ飛ばしてやったのだ。
だがもう使い物にならないだろうな。
俺がこうして、目的対象に思いっきり念を込めた指パッチンをすればあら不思議……
ドガァアアン!
手榴弾の如くスマホは爆発を起こしたのだ。
「ぐわぁあ!」
おっさんの断末魔が聞こえる。
だがおっさんは風圧によって吹き飛ばされただけなので、なんとか無事重症で済んだ。
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