と・く・べ・つ♪7

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と・く・べ・つ♪7

 今年の宵宮は楽しみだ。翡翠が生まれてから十年は伊織先生に会わせないようにしようってみんなで約束して十年。とうとう翡翠も女体化してしまった。  気の休まるところはないけど、その代わりに翡翠も連れて今年は火の玉屋に行ける。これだけは毎年スタジオメンバーと一緒に行っていたから。  それどころか風くんに水くんに翡翠たちの担任の瑞希先生も参加して今年は母さんも来るんだ。  そりゃ張り切っちゃうよね。俺はこの日のために俺の浴衣と翡翠の浴衣を準備したんだ。 「瑠璃お兄ちゃん、まだ?」  翡翠は両手を上げて着付けをしている俺に声をかけた。着るのも難しくないタイプの浴衣だけど、俺も毎年母さんに着付けてもらったから、翡翠には着付けしてあげたくて仕方なかったんだ。 「終わったよ。ほら翡翠可愛い」  翡翠を姿見の前に立たせる。 「へへ。お兄ちゃん、ありがとう」  正直、俺は翡翠が可愛くて仕方ない。そんな可愛い翡翠が女体化したんだ。それも可愛いに決まってる。ブラコンなんて言われてるけど、自分のきょうだいが可愛いのって当たり前じゃんな。  翡翠も参加する今年の宵宮。翡翠を隠す必要がなくなったせいで十年ぶりにみんな俺の家に蒐まっている。もちろんメンバーは増えているから、ぎゅうぎゅうだったりする。  今夜の宵宮に参加するメンバーは、俺、翡翠、親父、母さん、大、徹、良くん、げたんわくん、香多くん、タッくん、五丁目さん、うたうものさん、本乃社長、アッキー、マッキー、風くん、水くん、瑞希先生、束砂さん、更紗さん、はろんさん、薫蘭風ちゃん、伊織先生の二十三人。増えすぎじゃね?  俺も浴衣に着替えて、みんなが待つ居間に向かう。 「あら。瑠璃、ちゃんと着付けできたわね。成長したわね」 「いつまでもやってもらう訳にいかないからね」  そんな話を母さんとしていると親父がブワッと涙を流す。 「女体化した瑠璃と翡翠の浴衣姿が一度に拝めるとは! お父さんの寿命が二百年延びちゃう!」  親父、どんだけ生きる気だよ。 「お父さんの甚平素敵だよ。お母さんの浴衣も綺麗!」  翡翠がそう二人を褒める。本当いい子だ。その分、天然だから心配になるけど。 「翡翠くーん、伊織先生の浴衣はどう?」  伊織先生は今年も女児向けアニメのキャラクター柄の浴衣だ。 「風くん、水くんにウケ悪くてさぁ」 「だって……」 「なぁ……」  風くんと水くんは翡翠に目配せする。 「素敵だと思います。でも僕よく分かんないや」  どストレートな翡翠の弁。そりゃそうだろう。翡翠たちが好きなのライダーとか戦隊ものだもの。女体化してても普通に男の子だよ。  
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