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町外れの図書館
英国の、ある晴れた日の昼下がり。
お父さんとお母さんと一緒に、図書館に来た。
100年前に生きていた『ワイズリー』という作家の図書展があるらしい。
私は、誕生日にお母さんから贈ってもらったお気に入りの私の名前が入ったピンク色のメッセージカードをしっかりとスカートの左ポケットに入れた。
たどり着いた建物は、落ち着いた町外れにある図書館。
中に入ると、大勢の人が本を読んだり作品を眺めて楽しんでいるのが目に飛び込んできた。
「先に入館料の支払いを済ませようか」
お父さんがお母さんに言い、お母さんも「そうね」
と言って賛成する。
お父さんが受付の人と話している間、私は1人で館内を見ていたくなってお母さんに訊いた。
「ねぇ、お母さん。私、先に本見ててもいい?」
「うん、いいわよ。騒がないようにね。
シェリアなら、大丈夫だと思うけど」
「わかった」
お母さんにそう答えると、図書館の中を散策し始めた。
1階にも2階にも大勢の人がいる。それほど有名な作家だったんだろうか?
森の中にひっそりと現れたかのような湖が表紙絵になっている本を読んでいる、首にパールが付いたネックレスを着けた女性にワイズリーについて話しかける。
「ワイズリー?あぁ、マイナーな作家らしいわよ。彼が生きていた頃は名前が雑誌に載らないだけでなく、書店に本も並ばないほどだったんですって。それに彼は、自伝や評論は一切書かなかったらしいわ」
女性はそう言うと、また本に向き直った。
邪魔をしてはいけないと思い、1階の窓際に移った。
今度は、顎髭を生やした老紳士にワイズリーについて質問した。彼はにこやかに微笑んで教えてくれた。
「おや、お嬢さん。ワイズリーについて知りたいのかな?ワイズリーは、生きとし生けるものだけでなく、物にも魂は存在していると考えていたらしい。例えば、今私たちが読んでいる本にも、物語の登場人物にも、ね。彼は、きっと自分自身が書いた物語や書物に魂を捧げていたのかもしれないね」
私は老紳士に「教えてくれてありがとうございます」と、お礼を言うと、その場を後にして1階と2階の本を眺めた。
タイトルを読もうとしたけど、難しくて読めない字が殆どだった。
それでも、半分だけ読めるタイトルもあったから、そういう本は中を見て読んだ。
『✻✻意識の✻✻』
(どう読むんだろう?)
表紙は、様々な花が描かれた絵になっている。
花の本なのだろうか?
ペラペラとページをめくり文字を読む。
『ヒヤシンス。
ギリシア神話に由来する春先に咲く花。色別で花言葉が違う。
花言葉:(白)控えめな✻らしさ、心静かな✻、あなたのために✻ります。
(青)✻実、節✻、変わらぬ✻。
(黄)✻✻、あなたとなら幸せ、勝負。』
その他にも多くの花言葉が収められている。
私は植物図鑑を棚にもどし、他の本を読みに行った。
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