町外れの図書館

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自分以外に本を眺めている人や本を読んでいる人は大勢いる。 マイナーではあるらしいが、魅力的な本を書く作家だったのだろう。 挿絵、表紙絵、内容共に本の世界へ引き込まれそうなものばかりだ。 ふと、日が当たる窓際に位置する本棚に立っている、亜麻色の髪でアイスブルーの瞳をした、首にペンダントを付けている灰色の上着を着た男性が読んでいる本が気になった。 しかし、逆光でタイトルが見えないだけでなく、表紙絵もところどころ手で隠れて分からなかった。 少し歩き疲れて、周囲をキョロキョロと見回した。すると、階段の壁に張り紙が貼ってあるのに気づいた。 『3階は休憩スペースとなっております。ごゆっくりお休みください。図書館長及び図書館スタッフより』 どうやら、3階に休憩スペースがあるらしい。 (少し休んでから、お父さんとお母さんに会おうかな) 3階に続く階段を上って休憩スペースに向かった。 休憩スペースに行くと、そこには誰もおらず私しかいなかった。 布張りのゆったりとしたパステルアイボリー色のソファが四方に位置しており、その真ん中に長机がある。長机の上には、白紙のメモ用紙と一冊の本が置いてある。 本のタイトルは『✻✻と✻✻』。 なんて書いてあるのか、分からない。 (そうだ、お母さんとお父さんなら読めるかもしれない!) そう思って、休憩スペースから2階に戻った。 しかし、2階に大勢の人がいたはずなのに、誰もいなくなっていた。 (…あれ?どうして誰もいないんだろう?) 1階に下りてみたが同じだった。 自分以外、誰もいない。 不思議に思って休憩スペースに上がった。 “おいでよ、シェリア。一緒に本読もう、遊ぼう!シェリア” どこからともなく、声が聞こえた。 (え?何?) 周りを見るが誰もいない。自分一人だけだ。 ふと、長机を見ると、メモ用紙に藍色のインクで文字が書かれていた。 『だ〜れもしらない、ひみつのばしょ、おしえるね。したにおりてごらん。合図があるよ』 …自分は、こんな文書いていない。冷や汗が頬を伝うのが分かった。…どうしよう。 自分以外に誰かがいるかもしれない。そう思って、また下に下りたが、どれほど探しても誰もいなかった。 ふと、光を感じて後ろを振り返った。 一冊の本が、机に置かれたままになって光っている。 タイトルは『物に✻は宿る』という本だ。 表紙絵は本棚が描かれ、壁や床は多色刷りになっている。 手に取って本を開こうとした途端、眩い光が周りを照らし思わず目を瞑った。
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