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黄色の部屋
中に入ると、本棚が多く設置された部屋に出た。中央に長テーブルがある。
入ってきたドアから本棚の本を全て眺め終わり、長テーブルに近づいた。
長テーブルには、小さな植木鉢が観葉植物用として置かれている。
その傍らに、『樹木図鑑』と書かれた本が置いてある。
植物にしては幹が太い。何かの樹だろうか?
しかし葉の色は緑ではなく、どす黒い赤紫色をしている。しかも、葉のあちこちに鋭い牙のようなものが無数に蠢いている。
怖くなって離れようとした時、木の幹に1つ目が出てきた。樹は私を見て、ニヤリと笑った。
“おい、そこの小さいの。おいら、腹減った。何かちょーだい”
「何かって…例えばどんなもの?」
“植物だと嬉しい。それしか食べられない”
「分かった。探してくる」
樹から離れて3つある本棚のうち、1番奥に行くと、茶色のドアがあった。しかし、ドアノブを回しても鍵が開かない。鍵が必要らしい。
しかし、今はそんなことより植物を探そう。
ドアがある本棚を右に曲がって、左に向かった。
突き当たりの壁に本棚があり、白いユリの花を手に持っている黒い服を着た、悲しそうな表情をした女性の絵が表紙に描かれている本が棚の上に立て掛けられている。
『葬式で使われることが多い花』というタイトルだ。
本の横に、ユリの花が花瓶に活けられている。
ユリを抜き取った後に本の表紙絵を見ると、
悲しそうな表情をした女性の絵がこちらを充血しきった赤い目で睨みつけている。
突然、本が光ったかと思うと、女性が表紙絵から出てきてユリとヒヤシンスを取ろうと手を伸ばしてきていた。
恐ろしくなって1歩後ずさると、私は樹がある長テーブルに向かって一目散に走った。
樹にたどり着くと、ユリを急いであげた。
“ん〜、美味い美味い。どうも、小さいの。お礼にこれ、あげる”
テーブルにカタン、という音がしてそちらを見ると、茶色の鍵があった。
これがあれば、鍵がかかっていた向こうの部屋に行ける。一刻も早く、あの怒り狂った女性から逃げなくてはならない。
「ありがとう、急いでるの!」
私はお礼もほどほどに樹にそう言うと、女性に追いつかれないように気をつけながら、本棚の奥に向かった。
ドアの差込口に鍵を回し鍵が開く音がした。ドアノブを捻り、ドアを開けた。
すぐ後ろから、女性が迫ってくる。
私はすぐに部屋の中に入り、表紙絵の女性の目の前でドアを閉め、鍵を使って施錠した。
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