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紫の部屋
壁も床も一面、紫色に彩られた部屋に出た。
ここも本棚が多い。しかし、さっきと同じでいつ何が出てくるか分からない。
私が迷い込んだ世界は、どうやら物が具現化する世界、らしい。
おそるおそる本棚に近づく。左から順に見ていって右に身体を向けたその時だった。
本棚の奥に、何かをむしり取っている紫色の服を着た女性を見てしまった。
(こ、今度は何……?)
気づかれないように、そっとむしり取られている物を見た。
女性がむしり取っていたのは、青色のローマンヒヤシンスだ。
(青色のヒヤシンス?…ということは、私以外にも人がいるの?)
しかし、今のところ人には出会っていない。出会っているのはどれも本の表紙絵が具現化した化け物ばかりだ。
おそらく、千切られているヒヤシンスを持っていた主はどこかにいるのだろう。取り返して持ち主に届ける必要がある。
それに、不気味な世界に独りぼっちなのはさすがに怖くてたまらない。誰でもいいから人間に会いたいと思っていた。
女性に近づいた途端、気づかれてしまい化け物が襲いかかってきた。
慌ててそれを飛び越えて難を逃れると、彼女がさっきまで千切っていた青色のローマンヒヤシンスを手に取った。ついでに床に置かれたままになっている本のタイトルも見る。『花占い』と書かれていた。表紙絵には、花占いをする紫色の服に身を包んだ女性が描かれていた。
花占いをしていたのであろう女性に追いかけられながら部屋を走っていると、本棚と本棚の間にある壁の中央にドアがあるのが目についた。
急いで、ドアに手を伸ばしドアを開けた。
部屋の中に入り、化け物が入って来れないようにドアノブに付いている鍵を使ってドアに鍵をかけた。
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