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「つーかお前髪乾かしてこいよ、床に水垂れてるだろ」
「家にいる時は召使いがやってくれるんじゃが」
「自分でやれ、タオルと櫛あるだろ」
そんなリオウとハクレイのやりとりを聴きながら、召使いは普通じゃないわね……と考えを巡らせる。そんな私の後ろに立つ気配。
「シュリエ、どうしたの? 生姜焼きならもうすぐできるわよ。土鍋のご飯もそろそろ炊けるし」
「……リンファは後ろに目でもついてるみたいだね」
どうやら振り向かずに彼が後ろにいることを察せたことに対しての言葉らしい。
「鍛錬の賜物よ」
「人外になる鍛錬でもしてるの?」
「失礼ね、普通よ。リオウもできるわ」
振り向くと「えぇ……? 」と首を傾げるシュリエと目があった。「ほら、準備準備」と促せば素直に動いてくれる。
ハクレイは慣れない手つきで髪を乾かしているようだ。彼の長い髪は痛んでいるわけではないけれど、雑に乾かされているせいで指に引っかかってしまうのかハクレイはやりにくそうにタオルと櫛と格闘していた。
「ほら、貸しなさい。やってあげるわ」
「む、いいのか?」
「ご飯冷めちゃうでしょ。準備はリオウとシュリエがやってくれてるわ。……薪割りそれなりに頑張ってくれてたみたいだし」
それを聞いたハクレイは私の方にタオルと櫛を預け、後ろ向きに座る。どこか満足そうに座るその背中に、私は長い髪を梳かしはじめた。
「お母さんだ」
「お母さんか?」
後ろで何か聞こえた気もするが、この歳でお母さん扱いは普通……普通じゃない、だろうか。17なんだけれど。
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