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髪を梳かしている間のハクレイはいつもの騒々しさが嘘のようにおとなしかった。寝ているわけではないようで、ただ真っ直ぐに前を見て口を閉じている。何か言いたいことがあるのかもしれないけれど。
そういえば、戻ってきた時のハクレイはなんだか焦っているようだった。私を怒らせて焦っていたのだろうか。ドアを直してくれたのにちょっと怒りすぎてしまったかもしれない。
私は普通を愛している。
でも、普通に固執することは私の悪い癖でもあると思う。普通じゃない力に目がいって、ドアを直してくれた事実を否定するのはいけない気がして。
「ハクレイ……ごめんね」
「? なんの話だ? 我は早くショーガヤキとやらを食べたいのだが」
生姜焼き食べたさに静かにしてたんかい。
まあ、彼の根が悪い奴ではないということは初めて会った時から知っている。私の愛する普通を乱す人物ではあるけれど。
私は人に恵まれている、といつも思う。
髪を梳かす手が止まっていたことに気づいたのか、ハクレイは「なんだ、もう終わったのか?」と口にする。私は一言「もう少し」とだけいって少しだけ見慣れた銀色の髪を櫛で掬った。
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