みんなで一緒に

5/12
前へ
/35ページ
次へ
 ハクレイの髪を乾かし終わり、みんながいる居間へ向かう。既にシュリエとリオウは食事のための準備を終えていたようで、私が作った生姜焼きを前にそわそわしていた。  そわそわしているのは私の前にいるハクレイも同じだ。みんな子供なんだから、と笑みを浮かべる。 「ほら早く座って食おう」 「うむ」 「おいしそ〜」  ではいつものを。とこほんと咳払いをして、息を吸う。 「神竜様に我らの祈りが届きますように。いただきます」 「「いただきます」」  綺麗に揃ったいただきますと、毎度のことながら微妙そうな表情のハクレイ。 「それは本当に気持ち悪いのう、我が神龍だからかもしれないが」 「あら、この村では普通よ。……神竜様のおかげで作物が実っているのだから」  私の言葉にハクレイはますます仏頂面になる。どうやら何か気に食わないことがあるようだ。 「我はそんなことはしていない。作物が実るのも、飯がうまいのもこの村の人間たちが頑張ったからだろう? 我の手柄にされても困る」  その言葉に驚いたのは私とリオウだ。ハクレイが人間を認める発言をするなんて明日には槍でも降るんじゃないだろうか。 「どうせ作物が取れなかったら我がお怒りだとかやるのだろう。それは困る」  まあ少しは保身があるのかもしれないけれど。 「一種のおまじない、感謝よ感謝」 「感謝……か。まあ、……それなら悪い気はしない」  ハクレイは生姜焼きと白米を頬張りながら私から目を少しだけ逸らした。これは彼の照れ隠しだ。いつも自信満々なのに、こういう時だけは妙にしおらしくなる。  
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加