12人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえばそろそろ神竜祭の時期だな」
リオウがそんなことを言い出す。確かにもう秋だし、神竜祭の時期といえば時期か。神竜祭と聞いて目を丸くしたのはハクレイとシュリエだ。この二人は去年の神竜祭の後に村に来たから知らないのか。
「神竜祭っていうのは、神竜に巫女が祈りを捧げる祭りよ。毎年巫女が変わるんだけど――そういえば今年の巫女はまだ決まってないわね」
「毎年神竜からのお告げがあるって話だが……」
「知らん、なんだその行事は」
神竜なのにこう言うことは何も知らないのね。なんか変な感じ。私たちが敬っていた神竜が目の前にいるなんて。まあ、私は神龍の名前を騙る手品師の線を捨ててはいないんだけど。……まあ、最近は信じてもいいかな、なんて思えるようになってきた。普通ではないけれど。
「リンファは巫女やったことあるの?」
「ないわよ。今年はスイレンじゃない? 美人だし、演舞も上手いし」
シュリエの言葉に私がそう返すと、ハクレイは面白くなさそうに「むぅ……」と唸った。
「巫女は神竜が決めるのだろう。では私が決めても問題はないな。神竜はリンファだ」
はあ? と思わず素っ頓狂な声をあげるが、ハクレイは止まらない。
「お告げというのは村の占い婆の頭の中にでも言葉を送っておけば良いのだろう。やってくる」
「ちょちょ、ちょっと待って!」
慌てる私に、リオウが「まあまあ」と宥める。まあまあじゃない。ぜんぜんまあまあじゃない。
最初のコメントを投稿しよう!