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しかし、それからはてんやわんやだった。村の人たちひっきりなしに押しかけてきたからだ。口々に「まさかリンファが」「おめでとう今年の巫女様!」「ありがたや〜」などと言いたいことを言いたいだけ言って帰っていく。
「なんだかすごいことになってきたのう」
「アンタのせいでしょうが!!」
ああ、普通じゃないストレスで倒れそうだわ。とりあえず皿洗いをしなくちゃ。そのあとはスイレンに生姜焼きを届けに行って――その後は。
巫女。神竜に仕え、神竜祭で舞を捧げる――。舞を捧げる、ハクレイに、私が。
無理無理無理。なんで私がこんなやつに。その時、家の外扉がゆっくりと開いた。見ると凛とした黒髪の女性――スイレンがひょっこり顔を出している。
「リンファー、聞いたよぉ、神竜祭、巫女なんだって? おめでとう〜」
全然おめでとうじゃないよスイレン、と愚痴る私に、スイレンは困ったように「あはは」と笑った。
「リオウのおじいちゃん、神竜祭の舞見るの大好きだったから、リンファが舞をするの絶対喜んでるよ」
それを言われると弱い。私を育ててくれたリオウのおじいちゃんは神竜祭の舞を見るのが大好きだった。おじいちゃんが亡くなった年は、その年の巫女が病気になってしまって舞が見られなかったから、おじいちゃんすごく寂しそうにしてたっけ。
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