そもそも、なぜこうなったのか。

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 焼けるような足の痛みと、硝煙の香り。運悪くガラガラと崩れる崖。ヒリヒリとした雪の冷たさ。全てはっきりと思い出せる。我を撃った男はこの村の者ではない。この村の者であれば竜に銃など向けはしないのだ。  ただただ運が悪かった。我はただ、  ただ人間と―― 「えーと、たしかこのあたりに落ちていったような……」  少し高めの人の声が聞こえ、我は慌てて幻術を使用し人間に化ける。今となってはこれが功を奏したのだろう。彼女の目には彼女の言う普通の人間のように見えたのだ。 「うわ、ほんとにいた! あなた大丈夫!? ひどい怪我……」  彼女の手当ての手際はとてもよかった。もしかしたら慣れていたりするのだろうか。持っていた布を押し当て止血をし、酒をかけて消毒をする。こんなに真剣に、我のために。 「まだ痛むわよね? 村の人……じゃないわよね? 肩貸してあげるから村まで行きましょう」  その声にハッとする。我といては彼女まで狙われるのでは、と。だがそれはいらぬ心配だったらしい。 「あ、あの男ならぶん殴って村の人に渡したから大丈夫よ。銃を持ってこの神聖な山をうろつくなんてどうかしてるわ!」  ぶん殴? 銃相手に? と疑問符を浮かべていると、彼女は我の体を軽々と持ち上げる。こっちは体格成人男性だぞ。どうやら彼女は力が凄ぶる強いらしい。そのまま彼女に背負われる形で一歩、一歩ゆっくりと村に向かい始めた。
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