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軽い調節音の後、アコースティックギターの柔らかい和音が流れた。
ポロン ポロンと零れ落ちるような音を、私は布団にくるまって感じた。
何処かで聞いたことがありそうで、でも勘違いかもしれない。うっすら懐かしい気もする、とにかくいい感じの曲。
寂しい夜の1人部屋にはしっくりくるバックグラウンドミュージック。
別に何かを求めるわけではなく、私は何も言わないで聞いていたし、彼もとにかくギターを弾いていた。
そっと目を閉じる。
誰かと一緒にいることが嬉しかった日々
自分のせいで誰かを突き放してから、じわじわと後悔した日々
寂しさを隠すように いらない見栄を張り過ぎた日々
衣装で メイクで必要以上に着飾って それでも自分を好きにも嫌いにもなれなくて・・・・・・
そんな日々が
音色と一緒なら 少しだけ甘い記憶になる気がした。
『終わったよ』
「え・・・あ・・・」
どこか深いところまで降りて行ったところを、すっと引き戻された感覚だった。
「・・・ごめん。ちょっと考え事しちゃって。いい曲ね。」
『これ、俺が作った曲』
「へぇ・・・」
普通に受け答えをしたつもりだった。
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