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『・・・もしかして 泣いてる?』
「・・・えっ・・・」
そんなことないよ
喉の辺りまで来たはずの言葉は、何語でもない嗚咽になった。
胸も口も目も 何もかもが突然熱をもった。それを逃がすために、幼稚な呼吸を繰り返してしまう。
「ごめっ・・・ごめん・・・・・・」
画面の向こうの彼は、何も言わなかった。
ただ、私が落ち着くまで時間を取ってくれているようだった。
「ちょっと・・・元カレのこと思い出しちゃって・・・」
『うん・・・』
「・・・すごく良い人でさ・・・でも・・・私バカすぎて・・・傷つけまくっちゃった・・・。周りにも嫌われてさ・・・もうどうしようもない奴だよ・・・私・・・」
『もしさ』
彼の声が聞こえる。
『もう一度一緒になれるとしたらさ、やり直したいって思う?』
「・・・多分 もうやり直さないと思う。私 変われたわけじゃないし・・・多分また同じこと繰り返すし・・・自分の身勝手さで、また誰かを傷つけたくないし、しばらくは、一人でいたい。」
『・・・そっか。』
彼は、深く聞かなかった。それが私にとって一番嬉しかったのかもしれない。
『・・・多分なんだけどさ。』
「うん。」
『俺は君のこと、よく知らないんだけど・・・』
「・・・うん。」
『そう思えるってことは、君は変われてるんだと思うよ。』
アコースティックギターみたいな、素朴で深くて温かい声だった。
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