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一通り状況を説明すると、少し間を空けて部下は口を開いた。
「あぁ、そういえば勇者っぽい人物が少し前に旅立ったという連絡があったじゃないですか」
「そうね」
確か、少し前にそんな報告はあった。
しかし勇者を名乗る人物は定期的に湧くし、いちいち相手にしてはいられない。それにまだ冒険者としての経験は浅いようなので、何処かで勝手に野垂れ死ぬだろうと、魔王は放っておいたのだ。
「なんかその勇者が、幻の魔法とされる転送魔法を、なんか凄い賢者から会得したとの連絡はありましたね」
「転送魔法?」
何故、そんな重要そうな報告を自分にはしないのか。
魔王は報告を受けていなかったために少し気を害したが、転送魔法というものも初めて知ったので、そちらに食いついた。
「なんか、任意の座標の少し上の空間を歪ませて、近くの物とか生物を転送させる、というか落下させるらしいですよ」
魔王はまた焦る。
まさに先ほどの剣が、それとしか思えない。
魔王のベッドを狙って、剣を落としてきたのだ。
「ということは何? さっきの剣、勇者の攻撃だったわけ? やべーじゃんそれ。生殺与奪の権を握られちゃってるじゃない、やべーじゃんそれ」
「勇者とは思えぬ姑息な攻撃ですね」
自らを転送させずに武器だけを落としてくるあたり、確かに姑息な手段と思えるが、やはり魔王は気が気でない。
あれがまだ剣であったからよかったものの、万が一あれが爆弾であったら、魔王は今頃木っ端微塵だ。
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