地の底から、飽くなき渇望を

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 * * *  魔王より勇者を捕らえ魔王城へと連れてくるよう通達が出てから数日後。  縄にくくりつけられた勇者が玉座の前へと運ばれてきた。部下の迅速な行動に魔王は感謝するしかないが、少し悩んでいた。  ――自分の命を狙う者が、簡単に言うことを聞くものだろうか。  そう考えると、従順にさせるために何らかの手段を講じなければならないのだが、魔王は勇者の人となりを知らないので一体何が効果的なのか、よくわからなかった。  玉座の前に連れられてきた勇者は何やら(わめ)いている。 「放せケダモノどもめ。俺は勇者だ、例えこの身がどうなろうとも、お前達の言いなりになどならんぞ。おのれ魔王め、早く殺せ」  ほどけるはずのない縄を必死に振りほどこうと、勇者は身をくねらせている。なんだか頑固そうだ。  危惧していた通り、意地でもこちらの言いなりにはならないという姿勢に、魔王は少し困る。拷問などですぐに保身に走るような(もろ)いタイプであってほしかったのだが、剣を落とすという姑息な手段に出る輩にしては気骨がありそうなので、魔王は溜め息をついた。 「まぁそう言うな勇者よ。お前のその姑息な魔法を我がために振るう気はないか?」 「黙れバケモノ。俺は勇者として、何があってもお前達には屈しない。おのれ魔王め。さぁ殺せ」  やはり芯の強い男のようで、魔王は嫌気が差す。どうすればこの男が平伏すのか、魔王には見当もつかなかった。
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