プロローグ

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プロローグ

 鏡に映った双子を見つめる。懐かしい愛情が溢れる。呼吸に合わせて上下する健気な双子を温かい手でそっと包んでやる。 「おかえり、私のおっぱい……」  つぶやくと、二つのふくらみがポロロンと震えた。両手がそのかすかな震えを確かに捉えた。気のせいじゃない。おっぱいも私との再会を喜んでくれているのだ。  ピンクのカーディガンをゆっくり肩から下ろす。グレーのタンクトップを首から引き抜く。乱れたセミロングの髪を手櫛で直してから、両手を背中に回す。ホックを外すと肩から紐が落ちる。ゆっくりと、ゆっくりとカップを(はが)す。  あなたが私のおっぱい……。 「うっ……」  熱いものがこみあげて来る。飲み込もうと苦心するほど、それ以上の圧力で湧きあがってくる感動と悔悟の念をどうにも抑えることができない。  どんな扱いを受けようとも一言の文句も言わず、私の我儘を受け入れてくれた小さな双子。健気で、そして不憫でならない。気がつくと私は二つのふくらみを両手で覆い、うずくまっていた。とめどなく流れ落ちる涙。 「ごめんね、私のおっぱい……。大事な大事な私の双子。もう二度と手放さないからね……」
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