太陽のもとへ

2/3

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
 水着のまま無人チェックインをすませ二つの部屋に二人ずつ入った。タクヤと呼ばれる男は念入りに愛撫してくれた。これだけ愛されれば快感で全身が潤っていくはずなのに、その日はどんなに乳房を揉まれ、吸われ、噛まれても気持ちよくはならなかった。そんな乳房と同盟を組むように、下の方も男の愛撫に決して心を許そうとしない。 「きれいなからだなのに、なんでだろうな……」  白濁液を私のお臍の上に残したまま長身のタクヤは出て行き、代わりに背は小さいが筋肉質のテツロウが入って来た。 きっと夏子さんのスペシャルな女体に満足したのだろう。満ち足りた笑顔で私に添い寝してくる。  乱暴に扱われた。乳房がもぎ取られるかと思った。乳首が食いちぎられそうになり、痛さで叫んでしまった。男の性欲のおいしい部分は夏子さんに吸い上げられてしまったのだろう。テツロウに残っているのは暴力と独りよがりだけだった。 「オマエのビーチクさあ……」  ──ビーチク? B地区? ……ああ、チクビ……、乳首のことか! 「色だって大きさだって形だっていい線いってるのに、インパクトがねえんだよ。揉んでも、吸っても、噛んでも、オレのカラダに印象として残らねえんだよなあ」  下が濡れていないのに強引に力で挿入され、襞が引きつれる。痛さでからだを捩った。焦れた彼は、濡れないならこっちがあるさ、と私をひっくり返し四つん這いにした。熱い肉の先っぽが谷間を伝うとき、私は不穏な企てを察知し鳥肌が立った。すかさずお尻を手で隠し抵抗したが、しょせん女の力だ。生まれて初めて排泄器官を犯された。  こんなに殺伐としたセックスは初めてだった。男を暴力に繰りたてたのは不感症で印象の希薄な平均的乳房であることは明白だった。この乳房がいつか私のからだに馴染むことはあるのだろうか。気長に待たなくてはいけないのだろうか。ああ、触られれば即子宮が反応したあの陥没乳頭のおっぱいが懐かしい。  この日のことは深く後悔した。行きずりのオトコなんてまっぴらだ。  おっぱいだって、考えてみれば行きずりのおっぱいだ。私に3年間寄生した後は別の女のもとへ行く。私の前にはどんな女がこのスタンダードおっぱいを身に着けていたんだろう。行きずりにおっぱいに行きずりのオトコ。片岡美彩という女の価値が不当に下がっていくように感じやりきれなかった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加