急転

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「片岡様のおっぱいはとてもいい子でいらっしゃいました。二年と九か月の間、お客様とそのパートナーの男性にあふれんばかりの愛情を受け今日まで大事にされてきました」  平均的イケメン営業マンは髪型も服装もいつも同じだ。きっとパンツの柄もみな同じなのだろうと想像する。そんな彼の表情はとても明るかったから、悪いニュースではなかったのだと胸をなでおろした。でもこうして緊急の呼び出しを受けたのだ。何かのっぴきならぬ事態が発生したに違いない。 「おっぱいが泣きじゃくっている夢を見られたのだそうです。一日だけでなく一週間も連続して。それでお客様から、おっぱいをお母さんのもとに帰してあげた方がいいのではないかというご提案を受けた次第でございまして……。ああ、レンタル料金についてはご心配無用です。三年分きちんとお支払いくださるということですから。で、ご都合がよろしければ、今日片岡様にお返ししたいのですが……」  迷うことなくうなずいた。そして嬉しさ余って泣き崩れた。
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