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おかえり、おっぱい!
ワンルームに辿り着くや否や玄関横のユニットバスに飛び込む。乱暴に脱いだパンプスが跳ね上がり玄関ドアにコツン、コツンと当たる。
「おい、美彩ちゃん、何かあったのか?」
レモン色のワンピースにアイロンをかけていた竹田くんがびっくりした顔をしている。私はドアを閉めロックする。
「大丈夫。ちょっと……、汚れちゃったの。恥ずかしいから見ないで!」
「そっか、わかった!」
鏡の前に立つ。バッグを置き、心を落ち着けるために心臓に手をあてる。昨日までとはちょっと違う感触を手のひらが感じ取る。何がどう違うのかはわからない。とにかく胸の感じが変わっている。
ゆっくり手をおろす。
「おかえりなさい、私のおっぱい」
鏡に映り込んだ丸い胸のふくらみに、竹田くんには聞こえない小さな囁き声であいさつする。
ごくりと唾を飲み込み、私を見つめる私に強い目でうなずく。
ピンクのカーディガンを脱ぎ、首からグレーのタンクトップを引き抜く。
ブラのカップがパンパンに張っている。ということは、日本人女性の平均値より大きくなったということか?
敏感な乳首がカップに押しつぶされているのを感じる。
──なつかしい、この感覚。
貸し出すときは陥没乳頭ではあったが、それでも乳房の頂きは感覚が鋭敏だった。そして全身の神経とつながっていた。そんな一体感を私は今とりもどしたのだ。
唾を飲み込む。背中のホックをはずし、ブラをゆっくりと剥がす。
「あなたが私の……」
涙があふれ出て、慌てて手で口元を覆った。竹田くんに嗚咽が聞こえてはならない。急いでシャワーのカランをひねる。シャーと勢いよく水が噴き出て浴槽を流れてゆく。
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