おかえり、おっぱい!

1/2

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ

おかえり、おっぱい!

 ワンルームに辿り着くや否や玄関横のユニットバスに飛び込む。乱暴に脱いだパンプスが跳ね上がり玄関ドアにコツン、コツンと当たる。 「おい、美彩ちゃん、何かあったのか?」  レモン色のワンピースにアイロンをかけていた竹田くんがびっくりした顔をしている。私はドアを閉めロックする。 「大丈夫。ちょっと……、汚れちゃったの。恥ずかしいから見ないで!」 「そっか、わかった!」   鏡の前に立つ。バッグを置き、心を落ち着けるために心臓に手をあてる。昨日までとはちょっと違う感触を手のひらが感じ取る。何がどう違うのかはわからない。とにかく胸の感じが変わっている。  ゆっくり手をおろす。 「おかえりなさい、私のおっぱい」  鏡に映り込んだ丸い胸のふくらみに、竹田くんには聞こえない小さな囁き声であいさつする。  ごくりと唾を飲み込み、私を見つめる私に強い目でうなずく。  ピンクのカーディガンを脱ぎ、首からグレーのタンクトップを引き抜く。  ブラのカップがパンパンに張っている。ということは、日本人女性の平均値より大きくなったということか?   敏感な乳首がカップに押しつぶされているのを感じる。 ──なつかしい、この感覚。  貸し出すときは陥没乳頭ではあったが、それでも乳房の頂きは感覚が鋭敏だった。そして全身の神経とつながっていた。そんな一体感を私は今とりもどしたのだ。  唾を飲み込む。背中のホックをはずし、ブラをゆっくりと剥がす。 「あなたが私の……」  涙があふれ出て、慌てて手で口元を覆った。竹田くんに嗚咽が聞こえてはならない。急いでシャワーのカランをひねる。シャーと勢いよく水が噴き出て浴槽を流れてゆく。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加