おかえり、おっぱい!

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 目をつむる。  手のひらと指の感覚だけで自分をおっぱいを感じ取る。  温かい弾力。全体的に丸みが増している。下乳の支えが頼もしい。腋の下で感じるすそ野の厚みは以前にはなかったものだ。  そっと目を開ける。  左側はまだ少し陥没気味であるものの、右の乳首は淡いピンク色の顔を斜め上に向けている。乳輪は淡いベージュ色。輪郭は相変わらずはっきりしないのだが、乳丘のミルク色と芸術的な調和を成している。 三年ぶりに再会を果たした私の双子はこんなにも美しく立派に成長していたのだった。 ──かわいい! 美しい! セクシー!   私は健気な双子への賛辞を惜しまない。  念入りにシャワーを済ませ、バスタオルを巻いて浴室を出る。 「何だよ。電話受けてから慌てて出て行ったから何か良くないことが起こったのかと心配してたんだぞ。どうやら、いいことだったらしいな?」  竹田くんは、何があったんだよ、早く教えろよ、と言ってバスタオルの端を引っ張る。私は園児のようにコロコロ笑いながらタオルの胸元を押さえている。  チャンスが到来したと感じた。  竹田くんに思い切って打ち明けよう。おっぱいレンタル会社に自分のおっぱいを委託していたこと。私の知らない女性の胸に宿り、私の知らない男に二年と九カ月の間愛されてきたこと。私のおっぱいの成長はその女性と男性の愛の(たまもの)だということ。  こんなに勇気を振り絞って告白したことなど今までなかった。きっと竹田くんを愛する気持ちでできたことだと思う。 「そうだったのか……」  一通り説明を聞いた彼の表情は予想に反して明るかったから、ひとまずほっと胸を撫で下ろした。 「知らない女の人に使われて、知らない男の愛撫を受けて来たなんて、竹田くんは気持ち悪くないの?」 「その男の愛撫で美彩ちゃんが感じちゃったりしたらすっごくイヤだけどさあ、そうじゃないんだろ?」  私はもちろん、うん、とうなずく。 「でも、そのおかげで成長したおっぱいを竹田くんはどう思うのかなあって……」 「成長したのは、もともとそのおっぱいに伸びしろがあったからだよ。つまり、揉まれて大きくなったんじゃなくて、年齢とともに大きくなるようになってたんだよ。少なくとも、僕はそう解釈するよ。だから、美彩ちゃんのおっぱいは100パーセント美彩ちゃんのおっぱいだ。そして、美彩ちゃんのおっぱいは、これからはこの僕が独占する!」  私は、ありがとう、と言って彼を抱きしめた。 「きょうはキミがおっぱいを返してもらった日だから『おっぱい記念日』だ。よし、二人で夜を徹してお祝いをしよう。『おっぱい記念日』で……『ソーニュー記念日』!」  そう宣言すると彼は、ランララーンとスキップを踏んでシャワー室に消えていった。
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