しあわせ、みつけた。

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「僕ね……、児童養護施設にいたんだよ……」  竹田くんの告白に私は冷静だった。竹田くんの温かい胸に抱かれながら、世の中にはそんなこともあるよなあ、と思った。愛する人が児童養護施設の出身──いいじゃないか。私だってネグレクトされてきたんだから、お相子だ。ノープロブレム!  頬を伝う彼の涙を指で拭いてあげた。 「そうだったの……?」  うん、と小さくうなずいく彼は、私の園児だ。 「甘えていいだろ?」 「いいよ。こんな私でよかったら、思う存分甘えて。私、まるごと竹田くんのものだよ」  たちまち広い手のひらで顔が包まれた。額にも、目にも、頬にも、こめかみにも、鼻の頭にも、顎にも、いたるところにキスが落とされた。耳たぶと鼻先とくちびるは甘噛みのシャワーを受けた。それは愛撫ではない。やはり、「甘え」だった。会えなかった母への甘えだった。そしてその甘えが、私には気持ちよかった。ちょっとだけ攻撃的な「甘え」 「んん……、うっ……」  顔のキスと甘噛みに私の身体ピクピク反応した。竹田くんは母親を慕っているのに、私のからだは彼のオンナであることをアピールしている。私はお母さんでもいいけど、やっぱり美彩だよ。 「美彩……」  よかった。私の名を呼んでくれる。私は美彩。竹田くんのオ・ン・ナ。 「竹田くん……」  なんでいつまで名字で呼んでいるんだろうと苦笑しながらも、やっぱり彼を呼ぶには「竹田くん」が一番合っていると思うのだった。
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