竹田くんの告白、そして赦し

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竹田くんの告白、そして赦し

 数日後──。 「本当は、おっぱい記念日の前にキミに告白しなければならなかったんだけど……」  竹田くんは私の前に正座した。膝に両腕を棒のようにつっぱりうつむいている。私より年上で学歴も上の竹田くんが、罪人のようにかしこまっているのが、なんだかとても不思議な光景に見える。 「じつは、僕は保育園に来てから美彩に出会ったんじゃない。ずっと前からキミのことは知っていた。キミをストーキングしてたんだ。キミの家族構成、ご両親のこと、どこでどんな仕事をしているのか、好きな食べ物嫌いな食べ物。僕はキミのあらゆる情報を入手した。保育園から家までこっそり尾行したこともある。双眼鏡でベランダに干されているキミの洗濯物まで調べつくした。もっともっと君に近づきたいと思って、保育園に願書を出した。まさか園長先生が本当に雇ってくれるとは思わなかったけどね」  そこまでうつむいて話していた竹田くんは、目を上げ私をじっと覗き込んだ。すべてを見通す目だな、と私は思った。  個人情報を盗まれて損をするようなことは私には一つもない。親も兄妹もいないし。財産もないし。犯罪経験もないし。だからそのことは気にしない。でもどうして私の情報をあさり、付きまとったりしたのだろう。 「それは、美彩のことがたまらなく好きになっちゃったからだ」  また読心術。彼には私の考えていることが見える。きっと過去も未来も見通されているのだと思う。優秀なストーカーは読心術もできるのか。 「好きになっちゃったって……。私たちどこかで会ってたのかしら?」 「じゃ、順を追って話すよ」  彼が始めたのは、大学を卒業してからの話だった。
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