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「第二の問題点は、性感ネットワークにうまく組み込めないケースが発生していることだ。性感ネットワークは子宮と膣と乳房を中心として体中に網目を巡らせている。そこにうまく入っていけないんだ。おっぱいを愛撫されても膣が濡れない。膣を刺激されても乳首が立たない」
「なーんだ。それでだったんだね。私だけ不良品があてがわれたのかなってちょっと悲しかったんだけど……」
正座していた竹田くんは、さらに背筋を伸ばし、居住まい度をアップさせた。
「美彩のおっぱいをテレポートしたのは僕なんだ」
「ふふふ。なんかそう言うオチになるんじゃないかって予感してたけど……」
「黙っていて、ごめん……」
「大丈夫だよ。私、そんなことで竹田くんのこと嫌いにならないよ。今まで通り仲良くできたら嬉しいな」
私は彼の肩を叩き、早く脚を崩すように促す。すると彼は膝の上に突っ張っていた腕をさらにつっぱらせ、一層からだを硬直させた。細いからだがポッキリと折れないかと心配になるほどに。
「それだけじゃないんだ」
「え……?」
竹田くんは肩から私の手を払いのけた。
「すまない!」
声が震えている。男の人が泣くのを初めて見た。それも私の大好きな竹田くんが。竹田くんが目に涙をためているのだ。
「竹田くん、やめてよ、そんなの。やめてよ……」
私の前に土下座した彼の肩を人差し指でちょんちょんとつつきながら懇願する。私の目からも涙がこぼれ落ちる。
「美彩ちゃんのおっぱいを使って、浮気してたんだ。ゴメン!」
「ウワキって……」
心が不穏にざわつく。真っ暗な闇の向こうから悪魔がのぞいている。家がミシミシを軋み、カタカタと揺れる。
──こわいよう、おかあさん。はやくかえってきてよ、おかあさん……。
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