フ・ク・シュ・ウ

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 食後、三人はカンさんの運転でゲストハウスに向かう。 「でも、突然辞めますって言われて、園長先生困ったんじゃない?」  夏子さんが助手席から振り返って訊く。 「ところがね、本当に不思議なんだけど、その日のうちに、もう代わりの人、決まってたの。すっごーくタイミングがよくて……。タイミングが良すぎて鳥肌が立ったわ」 「へえ……、そうだったの……」 「それって、竹田くんの運だと思うんです。彼といると本当に不思議なんです。あちこちにすでに布石が打たれているというか……。すべてが竹田くんの思い通りに周りが動いていくんです。その運に私も乗せられているみたいなんですよ」  私が饒舌なのはやっぱりお酒のせいもある。ちっちゃなグラスに3杯しか飲んでないのに。 「ねえ、テレポーターって超能力も使えるの?」  夏子さんらしい質問だった。彼女はオカルトに興味があるのだ。   「いやいや、僕はテレポート空間を操作することができるだけで、超能力なんてないですよ、ハハハハハ!」 信号が赤になって車が停止した。 「それはデスネ……」  ルームミラーに映った運転席のカンさんがニコリと笑って言った。笑い皺が本当に優しそうだった。 「それは、美彩さんの運勢ですネ。好きな人のためにになっている女性には神さまが味方するんですネ」 「……神さま?」  カンさんは神さまなんて信じているんだろうか。神さま? な人を導く神さま? 私は物心ついてから一度も、神さまなんて考えたこともなかった。 「イショケメの人には、神さまが降りて来るデスネ。自分はこれがしたい、こうなりたい、と強く強く思いナサイ。世界はそれが叶うように動くんデスヨ。神さまがそう創ったノヨ……」  信号が青になると、車が動き出す。カンさんはそれきり口をつぐんだ。運転中はしゃべらない人らしい。  竹田くんに肩を抱かれた。見上げると、潤んだ二つの目が街の明かりを反射しキラキラと輝いていた。 「竹田くん……」 「美彩……」 「僕たち……、強く願おうよ……、強く強く……」 「うん、願うよ。祈るよ。竹田くんと一緒に……」  ルームミラーにカンさんの目が映っていた。四角い枠に切り取られ笑いジワで細くなったそれは、神さまが雲の合間から見守ってくれているようでもあった。
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