おっぱいの女神

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「これでいいのかしら?」  夕食の片付けが済むと、夏子さんがキッチンテーブルに一枚の書類を広げた。婚姻届けだ。すでに私と竹田くんの名前と住所が記入され、捺印も済んでいる。保証人の欄には保育園の園長先生の名前と住所。そして、夏子さんの名前と住所。 「じゃ、押印します」  夏子さんは実印の向きをもう一度確かめて、ぐっと書類に押し付ける。 「ありがとうございます」  私と竹田くんは声をそろえて頭を下げた。 「『おっぱい女神』が証人なんだから、二人、ゼッタイに幸せになれるから」 「はい、いつも女神さまに見守ってもらえるかと思うと心強いです」  竹田くんは律義にもう一度頭を下げる。私は頭が下げられない。だって、涙がこぼれちゃうから。私は夏子さんと竹田君に出会ってから泣き虫になった。 「で……、もう一つ女神さまにお願いが……」  竹田くんの声が慎重になる。  いよいよだ。  昨晩ソウルのゲストハウスで二人で話し合ったことをこれから夏子さんに話すのかと思うと身が引き締まる。つばを飲み込むと頭蓋骨がズグンと鳴った。 「女神さまにもできないことはあるけど、努力するわ。何かしら? 何でも言って?」 「はい、実は美彩から夏子さんのことを聞いてからずっと考えていたことなんですが……」
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