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「家」はあっても、やはり私は満たされない心を満たしたくてさまよっていたのだと思う。
──何をやっても満たされない私。どうせ足りないものだらけの自分だし。
おっぱいレンタル会社に乳房を預けることにした背景にはそんな投げやりな気持ちがあったと思う。いい子にしていても母は私を捨て男のもとに走って行ったように。つき合っていた男が私に遊び飽きてほかの女に走ったように。大事にしているこの乳房もいつか私を裏切って逃げていくような気がした。ならば……。
──私のことなんか気にしなくていいから楽しく遊んでおいでよ。私なら捨てられることに慣れてるし……。
このまま窮屈なブラジャーの中で不遇をかこつよりも、世間を見せて社会勉強させてやったほうが、おっぱいのためにもなるだろう。ちょっとは親らしいことをしてやらなくちゃ。もう二十歳なんだから。
「おっぱいレンタルドットコム」との三年契約。
「三年したらお母さんが必ず迎えに行くから、それまで世間に揉まれて、立派に成長して帰ってくるんだよ!」
明るく手を振ると、双子はプルルンとうなずいた。
グズグズべそをかくような弱いコには見えなかった、のに……。
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