儀式

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 思い返せば、私と美彩を急接近させたのはおっぱいレンタルだ。そして、竹田くんと美彩との出会いもおっぱいレンタルが縁となっている。これを「おっぱいレンタル屋の奇蹟」と呼ばずしてなんと呼ぼう。  空は薄紫色に染まっている。気象庁で確認した日の出時間は過ぎているのに、お日様はまだ姿を見せない。新緑の五月とはいえ、朝は肌寒い。だが、ふたりの身体はうっすらと汗に濡れている。からだの奥底から湧き上がってくる熱気にふたりはすでに全身を紅潮させている。  私は傍らで二人の愛の営みを見守っている。『おっぱいの女神』をより女神らしく見せるため、黒のナイトドレスを着てみた。シースルーだから乳首も黒の紐ショーツも透けて見える。本来は主人との夜の生活のために購入したものだが、肝心の彼は全くの無関心。でも、竹田くんも美彩もよく似合っていると言って褒めてくれた。女神さまだって褒められれば嬉しいのだ。  ふと考えてみる。  竹田くんと美彩じゃなくて、竹田くんと私、という可能性はなかったのだろうか? 私が保育園を辞する前から、園長先生は保育士を増やすことを計画していた。とすると、私が保育園にとどまり、竹田くんと出会い結ばれるという可能性も全くなかったとも言えないのである。 「ああっ! 竹田くん、大きすぎ……。裂けちゃうよ……。ゆっくりお願い……、ゆっくり……」  竹田くんのお尻に大腿筋のたくましい形が盛り上がっている。それは彼の腰に絡みつく白くすべすべした女の脚とは対照的だった。スーツ姿の彼は筋肉など全くついてなさそうな細いからだをしているのに、全裸になれば愛の営みのために必要な筋肉がこんなにも発達している。美彩への嫉妬が一層深まった。 「少しずつ入るよ……」  竹田くんの腰が美彩のからだに少しずつ沈んでゆく。美彩は潤んだ眼を一層潤ませ竹田くんを切なく見上げる。白い喉が震えている。くっ、くっ、くっ、と喉奥から断続的な喘ぎが漏れている。 「ちょっと待って!」  女神の私がストップをかける。
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