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園長先生の顔はよく見るとまん丸だった。高校のまんまる先生にとてもよく似ていると思った。
そうか、園長先生ってまんまる先生だったんだ。──そう思うとすごくおかしくなって、私はまた竹田くんとアハハハと笑った。
園長先生と夏子さんが私たちに気づいて手を振っている。私が大好きな最高の笑顔で。
すると抱かれていた双子が キャッキャッと幼児特有の甲高い笑い声をあげて、ピョーンと飛び降りる。
走って来る、走って来る。広くて真っ青な芝生の庭園をこっちに向かって走って来る。じゃれ合いながら、競い合いながら、短い腕を元気に一生懸命振りながら、短くて丸々と太った脚で一生懸命地面を蹴りながら、双子が走って来る。
私たちの大好きな双子! かわいいかわいい双子!
私と竹田くんは芝生にしゃがんで、子どもたちに大きく手を広げる。
お母さんはここだよ! お父さんもいるよ!
双子が私と竹田くんの胸に飛び込んだ瞬間、パシャーンと水が弾けて、爽やかな風がからだを吹き抜けた。
真っ青な空から双子の楽しそうな笑い声が降りて来た。それは天からの啓示のようにいつまでもいつまでもやむことがなかった。私も竹田くんも幸福感に包まれ、抱き合いながら空をフワフワと漂っていた。まるでシャガールの絵のように。
──大丈夫。竹田くんと一緒なら大丈夫。私は子どもを愛せる。しっかり育てられる。美彩はいいお母さんになれる……。
そんな確信がふつふつと胸の奥から湧き上がって来た。私は竹田くんの頬を胸に抱きしめた。私から絶対離れられないように、しっかり、しっかり抱きしめたのだった。
了
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