レンタル会社との契約

1/4

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ

レンタル会社との契約

「当社ではお預かりいたしました乳房を『おっぱい』と呼ばせていただきます。そこには男性視線の何らいやらしい意味は含まれておりませんのでご了解くださいませ」  男はテーブル越しに、よろしいでしょうか、と私の目をのぞき込む。うなずくと、隣のソファ座っている夏子さんも一緒にうなずいた。そのリズムに合わせて彼女の大きいおっぱいもうなずいている。  男はなかなか精悍な顔をしている。目は切れ長だし、鼻筋も長く涼し気だ。だ。背もすらりと高い。きっと素敵なカノジョがいるのだろう。 「契約書はすでに紹介者の広本奈津子様とご一緒に確認されたとのことですので、今日は要点をかいつまんでのご説明になります。  片岡美彩様は現在はたち、そして独身でいらっしゃいますので、契約期間は3年が適当かと思われます。満了日は23歳のお誕生日となります。  当社でお客様の大切なおっぱいをお預かりしている期間中、お客様には仮のおっぱいを提供いたしております。片岡様は日本人ではたちでいらっしゃいますから、はたちの日本人女性の平均的なおっぱいが支給されます。それは大きさ、形、色において平均的という意味でして、感度について言及するものではありません。それは片岡様の今後の経験により育てていただくことになります。なにぶん未使用の、えー、つまり男性経験のないおっぱいでございますから、初めのうちは違和感をお感じになる場合がございますが、じきにお慣れになることと思います。  一つご注意くださいませ。大きさにご不満の場合、豊胸手術をしていただくことも可能でございますが、手術の前には、当社の製品であることをお伝えください。さもないとおっぱいが溶けたり破裂したりする憂慮がございます。その際の損失額は全額契約者様にご負担していただくことになります。その一点、ご注意願います 」  隣りに座っている夏子さんが背筋を伸ばし胸をぐっと張って見せる。カットソーに浮び上った胸は丸く堂々としている。彼女は去年おっぱいを預け、かわりに23歳のを支給された。数週間前に受けた豊胸手術にも満足しているようだ。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加