レンタル会社との契約

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 視線を男に戻した。  よく見ると、このイケメンであることは変わりないが、不思議にも魅力的であるとは感じなかった。100人のイケメンを合わせ100で割ったような、個性の欠如した平均的なイケメン。マネキン人形のような。蝋人形のような。 「お預かりしました片岡様のおっぱいの運用は当社に一任させていただきます。先ほどの事前検査で判明しましたことは、片岡様のおっぱいがほぼ新品でいらっしゃるということです。多少発育の遅れが見られ、性感が未開発、そして陥没乳頭でいらっしゃいます。でも、ご安心くださいませ。最近、乳首の小さい、あるいはまったく出ていないおっぱい、すなわちおっぱいをご所望のお客様が増加の傾向にございます。したがって、相当に高額料金でのレンタルが可能かと…」 「あの」と私はイケメンの話の腰を折って、遠慮がちに挙手した。 「私の乳房は……あ、いえ、私のおっぱいは……レンタル先でどのような扱いを受けるのでしょうか。人前にさらされるとか、男の人に触られるとか……」 「新しいおっぱいでAVに出演される方もいらっしゃいますし、パートナー様とのセックスライフを満喫される方もいらっしゃいます。傾向として、おっぱいをレンタルされたお客様は充実したセックスライフを営んでいらっしゃるということです。未知の刺激を求めて新しいおっぱいをレンタルするわけですから、3年後に戻って来た時はボリュームがアップし性感が開発されているという場合が多いようです。規約では、傷や痣をつけたり機能障害を招来した場合、それ相当の弁償をしていただくことになっております。当社といたしましても精いっぱいのメンテナンスを施してからお返しするようにしております」  施術室に案内された。  服を着たまま婦人科の検診台のようなものに座らされ看護師に全身麻酔をかけられた。平均的かわいさの看護師に見守られながら背中がゆっくり後ろに倒される感覚だけが記憶の片隅に残っている。  次の瞬間目を開けると、夏子さんが私を上からのぞき込んでいた。 「……ん……えあった?」  麻酔のためだろうか、舌とくちびるがうまく動かず変な発音になってしまった。でも、夏子さんはちゃんと理解してくれた。 「終わったよ! 終わった!」
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