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プロローグ
占ってほしい。
そうせがまれて、二人で色々なお客さんの未来を見てきた。
人間は、自分の未来を他人に晒してでも知りたい生き物だ。それが良い未来だろうと、はたまた悪い未来だろうと、恥ずかしいという気持ちは抱かない。スマホの中身を見られる、みたいなこととはワケが違うというのに。まったく不思議なものである。
だが、そうまでして知りたい未来があるのだ。
――恋人はいつできるのか。
――病気になってしまわないか。
――会社が倒産しないか。
人間は、抜いても抜いても生えてくる不安と戦っている。そんな不安を、少しでも取り除くのが僕たちの仕事だ。
光城駅から上り方面に一駅。そこは地方都市の外れにあるひなびた繁華街。
妖しげなネオンを付けた店が立ち並ぶ、この街唯一のアンダーグラウンド。
土日、祝日は定休日。開店時間は夜の七時から十時まで。お客様の未来を見ることが、僕たちの仕事。
今夜も時間の許す限り、皆様の不安を解消します。
ここは占いの館、『わくわくフォーチュンハウス』。
クソダサい名前に愛着さえ湧いてきた、僕の職場だ。
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