プロローグ

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/340ページ

プロローグ

 占ってほしい。  そうせがまれて、二人で色々なお客さんの未来を見てきた。  人間は、自分の未来を他人に晒してでも知りたい生き物だ。それが良い未来だろうと、はたまた悪い未来だろうと、恥ずかしいという気持ちは抱かない。スマホの中身を見られる、みたいなこととはワケが違うというのに。まったく不思議なものである。  だが、そうまでして知りたい未来があるのだ。  ――恋人はいつできるのか。  ――病気になってしまわないか。  ――会社が倒産しないか。  人間は、抜いても抜いても生えてくる不安と戦っている。そんな不安を、少しでも取り除くのが僕たちの仕事だ。  光城駅から上り方面に一駅。そこは地方都市の外れにあるひなびた繁華街。  妖しげなネオンを付けた店が立ち並ぶ、この街唯一のアンダーグラウンド。  土日、祝日は定休日。開店時間は夜の七時から十時まで。お客様の未来を見ることが、僕たちの仕事。  今夜も時間の許す限り、皆様の不安を解消します。  ここは占いの館、『わくわくフォーチュンハウス』。  クソダサい名前に愛着さえ湧いてきた、僕の職場だ。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!